俺様先生と秘密の授業【完全版】
 さっきから、腕が。

 心臓の鼓動に合わせて、ドキドキと痛み出し。

 本当に立っているのもツラかったけれど。

 ここで、あたしが、引っ込んじゃったら、ダメだ。

 心配そうな、直斗の手を振り切るようにして、あたしは、岸君と、狼との間に立った。

 直斗以上に、心配そうな。

 でも、とても嬉しそうな顔の岸君に、ちらっと頷いてから。

 あたしは、兄貴の前に出た。

「……愛莉。
 それでもお前は、この男を庇うのか?」

 低い。

 兄貴の声に、あたしは、頷いた。

「うん」

「愛莉さんっ!
 騙されちゃ、いけません!!
 その他にも、この男の良くないウワサは、いっぱいあるんです!
 目的の為になら、手段を選ばない、とか!
 この男の前に立ち、邪魔したヤツは、酷く傷つけられて。
 ……中には死んだヤツも居るとか、シャレになんない話まで!
 俺が聞いた中では最凶のウワサばかりつきまとうヤツですよ!?」

 そんな。

 吉住さんの必死っぽい言葉に。

 なんだか、ちょっとだけ、笑えた。

 そんな話。

 本当に、岸君のコトだなんて、とても思えないよね?

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