俺様先生と秘密の授業【完全版】
 

「加月さんっ!
 逃げるよ?」


 一体何が起きているのか判らないまま、ぼう然としてると。

 悪いクラスメートたちを追いかける、天竜組の背中を見送って。

 岸君が、あたしに手を差し伸べて来た。

 ココロなしか。

 服は、沈黙の狼の上着を脱いでも、暴走族モードなのに。

 急にカッコ良くなった岸君、というよりは。

 今までの、猫背気味の岸君にがくっと戻った感じがする。

 でも、だからこそ。

 岸君の手を、何の抵抗も無く、握れたんだけど。

 だって、岸君のあんな顔……何だか不安で、見たくないよ。

「き……岸君っ!
 あたし、聞きたいことが山ほどっ……!」

「あるだろうね。
 だけど、あとでね?
 今、忙しいから」

 天竜組が戻って来る前に、居なくなってた方が良いからって岸君は言った。

「え?
 でも、天竜組のヒトって、岸君の知り合いなんでしょう?」

「知り合いなのは、確かだけどね。
 本当に、味方かって言うと、かなり謎。
 特に、狼の上着を着てるとこ見られちゃったし。
 天竜組が戻ってきたら、今度のマトはその上着だよ」

「……!」

「なんで、加月さんが持ってるか知らないけれど、その上着、大事なんでしょう?
 破られたり、汚されたくなかったら、今はさっさと逃げちゃった方が良いよ」
 






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