長編ラブレター
ファーストコンタクト
十九歳の冬、私は焦っていた。
今まで付き合った事が無い、という事実にだ。
焦り過ぎた私は周りから止められるような三十路男に引っかかりかけた。
性的な事からは免れたものの、高校時代女子校で三年間異性と接する機会の無かった私にその男は心に大きなショックを与えた。
恵ちゃんと出逢ったのはそんな時だった。
傷心した私にバイト先の先輩が紹介してくれたのだ。

第一印象ははっきり言って『何だこの人!?』だった。
待ち合わせ場所におらず、ショッピングモールの電気屋でテレビを見ていたり、ランチの約束をしていたのに家で済ましてきていたからだ。
他にも本当に私より四つも年上の社会人か、と疑いたくなるような、片頬が引きつるような、言動が幾つもあった。
そんな恵ちゃんに私は何も話す気になれず、ロクな会話もせず別れた。
勿論アドレスなんて交換していない。
もう会う事も無い。
その時の私はそう思っていた。

夜、バイト先の先輩からどうだったかと尋ねるメールが来た。
先輩の建前上、"素敵な方でした"と社交辞令で返事をした。
暫くして、"アドレス交換しといたよ"と、恵ちゃんの携帯のアドレスと番号が添付されたメールが先輩から返ってきた。
しまったと思いつつも私はそのアドレスに一応仕事が忙しい中、来てくれた事についてのお礼メールを律儀にも長文で送った。
しかし、恵ちゃんからメールが返ってきたのは翌日の昼。
しかも、"ごめん寝てた。また遊ぼな。"の私の礼を述べた内容には一切触れていない二言だった。
私は不愉快に思い、そのメールに返信をしなかった。

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