カラダから始まる恋ってありますか?
【愛美side】
お店の壁掛け時計が12時を回ってから、あたしは何度もドアを見ていた。
お店のドアが開く度に、もしかしたら裕介さんが来るかもしれない。
そればかりを思いながら。
「きょうも来ないのかな?裕介さん」
いつの間にか、隣にいた由実がボソッと呟いた。
「うん…多分ね」
裕介さんがカフェに来なくなって一週間。理由は、分かってる。
裕介さんは今、ジュンと仕事を競い合っているって。
“ジュンには負けたくない。だから今は仕事に集中したいんだ”って
“ジュンには負けたくない”か…。
この言葉が、なぜか凄く気になって。あたしの心を不安にさせるんだ。
「今が大事な時期って分かってるけど、たまにはカフェに来てくれてもいいのにね」
由実が少し呆れたような口調で言った。
あたしは仕方ないよだけ言って、洗い終えて綺麗になったお皿を棚に並べた。