クルースニク
去年、一度だけ男を殺して血を飲んだ事があった。

勿論男の血なんて美味くない。

その男を殺したのは、俺が地下室から血の入ったボトルを持ち出した所を、偶然見られてしまったから。

そしてその時、初めて相手の体を傷付けて殺してしまった。

いつもなら血の量が減ってしまうから首を絞めて殺すのだが、予想外の事態でやむを得ず、近くにあったカッターナイフで男の首を切って殺してしまった。

今でも壁には噴出した血が染みとなって残っている。

隠す様にポスターを貼っているが、いずれバレてしまうだろう。

そうなったらこの家に火をつけてやる。



恋人の血を飲み終えると麗子が、

「目の色が茶色に戻った」

俺の目を見て微笑む。

血に餓えると俺の目は赤く変色してしまう。

これは子供の頃からで、3年前からではない。

子供の頃は何か物が欲しかったり、お腹が空くと目の色が変わっていた。

今はその欲望が『血』となり目の色が変わる。

俺の体は異常なのだ。

父も目の色が変わっていたらしいが、今となっては確かめる事は出来ない。

写真なんて一枚も残っておらず、両親は俺が8歳の時に病気で他界したと聞いている。
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