漆黒の少女。
少女は絶妙なバランスを保っている。
サーカス所属の新米ピエロと少女が想像の中で重なった。

少女は俺の正面約三十メートル離れている場所まで手術台を動かし、さらに脚立を手術台の上に乗せ、その上に立っている。

手には棒状の木が握られている。
少女はバランスを保ちながら棒で天井を壊し始めた。天井は正方形のパネルがびっしりと敷き詰められている。

天井のパネルを四枚分壊すと人間が一人潜れる穴が出来た。

すると、天井の穴の中にバケツと硫酸が入っている瓶を隠した。

少女は作業を終えると手術台を本来の場所に戻した。
少女の額には紙に水が滲むように汗を掻いていた。

「ふぅ、作業終了!!天井の壁がいい感じに朽ちていてよかったわ」

少女はハンカチで額の汗を拭き取った。

「天井の上で待ち伏せして、上から大量の硫酸をかけてやろうということ??」

少女は親指を突き出してその通りという仕草をした。〜Good Job!!〜

「でも、君の体重で天井の壁が崩れたりすんじゃないのか」

少女は俺の発言が気に入らなかったのか、顔を真っ赤にして頬を膨らませた。
さくらんぼのようだと思った。

「失礼ね、私はそんなに重くはないわ。スタイルには自信があるもの」

飴玉でも舐めてもらい落ち着かせようとした。
少女は弱火で水が沸騰するようにぶつぶつと呟きながらショルダーバックから飴玉を取り出して口に含んだ。

すると、少女は穏やかになり、美味しそうに飴玉を口の中で転がしている。

手術室が甘い匂いが充満していた。
しかし、それはただの錯覚だと分かっている。





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