緋桜鬼譚


 ――随分と、長い夢を見ていた。それは残酷な現実によって覚めてしまったけれど。


 夜空の下をゆっくりと歩く。隣には彼の姿。まるで逃がさないと言うかのように、痛いほどの力で手首を握られて。


 逃げたりしないから、手を緩めて。


 それを伝えたくて、隣の彼をちらりと見上げる。――彼は、こちらを向いてくれさえしなかったけれど。


 ――ああ、これが夢ならいいのに。


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