不思議病-フシギビョウ-は死に至る
たとえ、カナコが気負う部分があるとしても。
「……俺は先輩が気にすることじゃないと思います。――醤油、くれ」
エイヤに醤油注しを手渡す。
しかし、これはカナコにキョウスケの事情を聞いておいたほうがいいかもしれない。
何かと過去の事件に感情の引き金が潜んでいるものだ。
あとは、サヤ。
頬にガーゼを張っている様が痛々しい。
それで、自分が引き金になったんだから負担に思うこともあるだろう。
だが、
「あたしがどうこうする問題でもない。エイヤとキョウスケの問題、でしょ。――醤油とって」
まだ濁っている声で、サヤが言った。
そして、醤油注しがカナコのところまで回ってくる。
「……あはは、そうだよね」
カナコは微笑んだ。
「ちょっと湿っぽい話になるけどね」
食事も落ち着いたころ、カナコが切り出した。
「わたし、もしかしたらエイヤくんがふて腐れて、そのままばらばらになるんじゃないかって思ってたんだよ」
……オレもそう思っていた。
しかし、エイヤはふて腐れなかった。
ちゃんとキョウスケと向き合おうとしている。
偉いものだと思う。