たべちゃいたいほど、恋してる。
いろんな感情が混ざり合いバクバクと激しく動く心臓。
早く龍之介の前から逃げ出したい。
その思いが優衣の思考の大部分を占める。
「…もういい」
数分後。
そんな優衣の願いが通じたのか、その台詞とともに優衣の傍から離れた龍之介の体。
二人の間に生暖かい新しい風が入り込む。
消えた影にほっと小さく息を吐き顔を上げる優衣。
しかし顔を上げた先に見えたのは、いつもの優しい龍之介の姿ではなかった。
「あ、」
冷たく、まるでいらないものを見るように優衣を見下ろす龍之介の瞳。
その瞳に喉が引きつり声出ない。
戸惑う優衣をすっと刺すように見たあと、龍之介は無言で家庭科室を出ていった。