たべちゃいたいほど、恋してる。
「や…龍くっ」
枯れた優衣の喉から紡ぎだされた龍之介の名前も届くことはない。
バンッと大きな音をたてて勢い良く閉まった家庭科室の扉。
それは優衣と龍之介を隔てる壁のように厚く大きく思えて。
壁に背中を預けながらぺたんとその場に座り込む優衣。
(どうしようどうしようどうしよう)
その言葉ばかりが優衣の頭をぐるぐると廻った。
ぽたりぽたりと頬を伝い床に落ちる涙にも気付ていないのだろう。
優衣は呆然としながらただただ龍之介が消えていった扉を見つめるだけ。
そこで漸く気付いた。
自分は本気で龍之介を怒らせてしまったのだ、と。
彼を失ってしまうかもしれない、と。