たべちゃいたいほど、恋してる。




龍之介にとって自分はいらない存在になってしまったのだ、と。




「ごめ、なさ…っ」




"ごめんなさい"



それは無意識に零れた言葉だった。

反射的に出てしまったと言ってもいい。


ただ、これ以外の言葉を優衣は知らなくて。


父からあの目を向けられたとき、唯一発することが許された言葉。

この言葉以外に何を言っていいのかわからない。


しかし、その言葉さえも龍之介には許されなかったようだ。




「…いちいち泣くな。めんどくせぇ」




そう言って嫌そうに顔を歪める龍之介。

チッとあからさまな舌打ちが響いた。


龍之介にそう言われ、優衣は初めて自分が泣いていることに気付く。

だが、自分では涙を止めることが出来ない。




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