たべちゃいたいほど、恋してる。
指が白くなるほど握られたパーカーの裾。
その時、ふと下の階から電話の鳴る音が聞こえた。
その音に優衣は俯いていた顔を持ち上げる。
聞きなれた無機質なそれは父親の携帯電話が着信を知らせる音。
恐らく優衣が名前も知らないような女からの電話だろう。
いつもなら煩わしく感じるその音も今ばかりは天の助けのように思えて。
ただただ有り難い。
父親はなかなか鳴り止まないその音に反応したのか、舌打ちを一度落とすと下の階へと降りていった。
遠退く足音にほっと短く息を吐く優衣。
しかし、小さな体の震えは止まってくれない。
手の震えは手のひらに納まっていた携帯電話へと伝わる。
そして無意識のうちに求めるように龍之介のダイヤルを回していた。