射しこむ光りはかわらない
ひかり。
『 どうせなら 降り止まないで 朝がくるのを 気付かせないで 限りあるなんて
 気付かせないで
白い光りは 眩しすぎて 私と影をも 同じく写す 
いいって言うまで降り止まないで。』

最後の曲はバラード。
箱詰にされたライブハウス「猫」は一瞬、時間が止まり、それが動き出すのと同じに観客の歓喜の叫びと鼓動が動きだす。
空調はMAXなのに蒸し風呂のように暑い。観客一人一人もみな絞れるほどの汗を衣類に吸わせている。その溢れた熱気が小さなホールを世界からはみださせる。
バンド『Butterfly』のボーカル国分恭子はマイクスタンドを握ったまま歓喜の余韻をあじわっていた。



汗で張り付いた体のSilhouette。
張り付いた長い髪が切れ長の二重の目に影作り小さな鼻を避けて薄い唇に絡みつく、いくつにも絡みつかれたそれは彼女を照らす光りを弾いて違う色の光りをつくる。

客席から
ステージの彼女を見つめる立川イロは写真を知った事をまた後悔する 。
ステージの彼女を見つめるたびにイロは歯痒い想いになる。
いつも瞬間を逃さない為に持ち歩いている二台のカメラはお決まりで入り口で取り上げられてしまう。
今一番、写真にとりたい姿をいつも、指をくわえながら、ただ、ただ記憶に留めるしかなかった。


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