だって君が好きだから。
「何してるの?」
えっ、今の声…。
あたしは恐る恐る
修の腕の中から顔を出して
声のする方を見てみた。
…やっぱり、どうしよう。
「……鈴夏?」
修はあたしの手を
ギュッと力をこめて握った。
「優梨ちゃん、
映画は行かなかったの?」
「……ごめんなさい。」
「別に、謝らなくてもいいよ」
「…でもっ、」
「いいから…。」
あたしの言葉を遮って
修がそう言った。
「鈴夏…ごめんな。」
「何で謝るの?
謝らなきゃダメなのは
あたしだったよね。
大阪までわざわざ来てくれたのに
あたし、全然知らなくて。」
「言ってなかったんだし
鈴夏は悪くないよ。
俺、バイト上がらしてもらうから
話しようか、鈴夏。」
「優梨ちゃんも一緒に
話しようよ?」
「優梨はダメだ。
後で俺から話すから」
「じゃぁ、あたし話さない。」
「鈴夏、頼むよ。」
「大丈夫だよ、あたし。」
「ほんとに大丈夫か?」
修はあたしの顔を
覗き込んで心配してくれる。
「うん、大丈夫だよ。」
「じゃぁ、ちょっと待ってて。」
「いいの?
あたしと優梨ちゃん2人にして。」
「……優梨、おいで。」
「あたしは、大丈夫!」
「…でもっ、来て?」
「修、大丈夫だから
行ってきていいよ。」
「俺が大丈夫じゃない。」
修がそう言うから
あたしは修について行った。