愛、シテあげる。*完*
耳に微かに届く君の声。



それは掠れていて、叫ぶように私を呼ぶ。







蓮。








泣かないで。













大丈夫。





もう、怖くない。











だから、









笑って。




















海に溶けていくような感覚に、身を任せた。






私はきっと助からない。











諦めて。




私のために、諦めて。










君まで巻き沿いにしたくないから。







未だに聞こえる愛しい声に、微笑んだ。








大丈夫。






私は大丈夫だから。









もう、十分幸せだった。

















蓮に会えて良かったな。














終わることの無い闇に堕ちていきながら、私は耳を澄ました。








どうせ堕ちるなら、君の声を聞きながら堕ちたい。




最後の願いは、届いた。








――真央さん!





















蓮……。














真っ暗な海の中で、











ポツリ、と涙を溢した。


























「………愛してる」
























願わくば










生まれ変わっても









また、君に会えますように。











だから、







さよなら、なんて




言わないからね。
























意識を飛ばした瞬間、










体を温かなものが包み込んだ。

















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