愛、シテあげる。*完*
「あら、真央ちゃん!こんなところにいたのね!」




ふと。下の方から声が聞こえた。


「ママ」

「気持ち良さそうね。そろそろ、お昼ご飯食べない?」

眩しそうに私を見上げる。

「うん」

そういえばお腹空いてきた。やっぱ人間は三大欲求には勝てないんだね。


「あ、ママどいてて」

私がそう言うと、不思議そうにしながらも、素直にどいてくれた。

「よいしょっと」



スタンッ


「キャッ!」
ママが驚いたように目を見開く。
「真央ちゃん!凄いわね!あなたは忍者?忍者なの!?」
目をキラキラと輝かせる。

なに言ってんの;

「3~4メートルしかないから」
「3~4メートルって、2階か3階の高さよ!?凄いわ!」
相変わらずハイテンションっすね…。
はしゃぐママを尻目に、別荘へと歩き出す。

「あら。真央ちゃん待って!」

横に並ぶ我が母。その顔はいつもニコニコしている。


ママは、強い。
あの人に別れを告げられても、こんなに明るく過ごせるなんて。
ママは、甘い恋愛も苦い恋愛も、たくさん経験したから、強いのかな。



ママが私の立場だったら、蓮に対する気持ちが何なのか、分かるんだろうな。


「真央ちゃん?」
「……え?」
「悩み事でもあるの?」
ドキッ


「ううん。お腹空いてるだけ」


ニへ、と笑って誤魔化すと、ママはそっか、と言ってそれ以上追求してこなかった。







別荘の目の前まで来ると、心臓が嫌に速くなる。



蓮に、どんな顔して会えばいいんだろう…。ううむ…///

いきなり声かけても変だしなあ。いっそ一人で食べるとか?……いやいやそれはいかんだろ。

悶々としているうちに、中庭に着く。

どうやらバーベキューをしているみたい。


ああ……蓮に会いたくない。
< 79 / 212 >

この作品をシェア

pagetop