きっとそれを      平凡と呼ぶのだろう
婦人科
「ねぇお母さん、最近すごく、生理痛が激しいの…」
 小さな訴え。

「お母さんだって、昔はすごく痛かったよ」
 さり気なく流された話。
 この時のことを母は後悔しているのだろうか。
 それとも、周りに習って性交を行った我が子本人に責任があると思っているのだろうか。



 数ヶ月後。

 余りに苦しむ姿に、母も心配したのだろう。
 初めて産婦人科に行った。

 大きな病院ではなく、個人病院に連れていってくれたのは、母なりの気の使い方だったのかもしれない。

 見ず知らずの人に陰部を看られた。
 病院だからと思うとあまり抵抗はなかったが、内診は痛かった。

「内膜症ですね。最近は若い人にも増えてるんですよ」
 初めて聞いた病名。
 子宮内膜症。

 月一で起こる月経が、子宮ではなく、卵巣や卵管はたまた子宮周りの筋肉の中で発生する病気。
 現段階で治す方法はない。

 彼女の左の卵巣がダメージを受けていた。
 卵巣の中には大量の血液が固まっていて、何倍にも腫れ上がっていた。
 長い長い治療が始まる。
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