逝く前に
母
「……じゃあ、それでよろしくお願いします」
親父の声と共に、知らない人が薄暗いこの部屋へと入ってきた。
親父の目は赤かったけれど、その知らない人と、淡々と事務的な会話をしているのに苛ついた。
『息子が死んでもアンタはやっぱり悲しくはないんだな』
親父とは何年もまともに会話をしていない。
口を開けば人を馬鹿にするような言葉ばかりで……。
俺はそんな親父が大嫌いだった。