トーキョークラブ





「結衣さん、どうして日本に来たのに、アーティスト活動しないんですかね?アメリカではこんなに輝いていたのに」





そう呟きながら小坂が見ていたのは、結衣の作品集だった。


日本では売られておらず、アメリカのみで販売されたもので、俺はこの作品集を見て彼女の才能を知った。




表紙のデザインにも起用されている巨大な壁一面のカラフルな絵は、まるで無邪気な彼女をそのまま写し出したような作品。


“平和”と題されたその作品は
彼女のお気に入りでもあり、俺の心を揺るがした絵でもある。






「これ、結衣さんがこの前、コンビニのごみ箱に捨てたんですよ」


「捨てた?」



小坂は表紙を優しく撫で、それから俺に差し出した。




「ちょうどその時、ごみ袋の交換をしてたのが私で。結衣さんは気付いていなかったんで、こっそり見てみたらこれだったんですよ」



まず俺は小坂がコンビニでバイトをしていることに驚いたが、しかし、結衣のことにも驚いた。








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