トーキョークラブ





弱冠18歳でアーティスト活動を始めた彼女にとって、その作品集は、彼女自身を象徴しているようなものだった。



結衣は、言葉にはしなかったものの、その作品集を誇りに思っていたのだ。





そんな物を、自ら捨てるだなんて。



彼女らしくないし、第一、理由がまったく分からない。






「これを捨てるだなんて、よっぽどのことがあったんじゃないかな。今はこうして、笑っているけれど」




小坂のそのつぶやきに
俺は今すぐにでも、結衣が抱えている全てを知りたいと思った。



しかし、それと同時に
知ることを躊躇する心もあった。





俺は彼女のその深い部分を知っても、その傷を癒せるのか、力になれるのか、自信がなかったからだ。






「先輩、いいの?」



作品集の薄いページを捲る手を止め、小坂に首を傾げる。



「結衣さん、たぶんもう絵を描くことを諦めてる。私は分かります」





ふわりと抜けた風に
俺は、鳥肌をそっと立てた。







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