夏の名前
「ねえ、歌ってよ。」
一緒に枝に座ると、ニノに言った。
「そういや、誰にも聴かせたことないんだよな。」
「よっしゃ!第いちごーうっ!」
「だからバカっぽいって…。」
苦笑しながらも、ニノは歌い出した。
どこか悲しげな曲。
それでいて暖かい。
なんだか、ニノのようだと思った。
「優しくなれる気がするね。」
素直な感想を言う。
「なんだそれ?」
ニノがふふっと笑う。
「いや、感想言うのとか苦手だし…。…でも、すごくよかった。」
心から出た感想だと、二宮は思った。
「お世辞よりは嬉しいですね。」
嬉しかったが、口から出たのはいつもの皮肉文句だった。