六天楼(りくてんろう)の宝珠
領主の責務として、彼は度々遠方へも足を運んで現地を視察している。工業の町桐の噂は翠玉も聞いていた。形の良い眉をひそめる。
「お土産はともかく、大丈夫なの? あの町は、最近良い話を聞きませんが……自ら出向かれるのは危険ではないかと」
碩有は微笑んだ。
「だからこそ行くのですよ。領主が椅子に隠れて命令だけでは、油断して従わない者が出てくるのです。それに、朗世(ろうせい)や護衛も連れて行きます。心配されるには及びませんよ」
「……そうですか」
持っていた箸を置いて、翠玉は目を伏せた。
戴剋は高齢なのもあり、邸宅からは滅多に外には出なかった。だが碩有は違い、何事も自分で確かめるのを基本としていた。腹心の部下で切れ者と名高い朗世を使って、さらに何人もの精鋭を動かして政治を行っているという。
安寧を貪っていた古参の家臣には、それを良しとしない意見もあるらしい。
「領民から不平の声が上がっているのです。私も以前あの町に滞在していたことがあるが、その時には平和そのものに見えました。何かが変わったのかもしれません」
食事が終わると、彼はいつも翠玉の房でしばし話をした。内容は政治のこと、お互いの趣味のこと、家族のこと。さまざまだった。だから今日桐の話題が続いても、翠玉は全く不思議に思わず聞いていた。
「それより、お土産何も希望はないんですか?」
「お土産はともかく、大丈夫なの? あの町は、最近良い話を聞きませんが……自ら出向かれるのは危険ではないかと」
碩有は微笑んだ。
「だからこそ行くのですよ。領主が椅子に隠れて命令だけでは、油断して従わない者が出てくるのです。それに、朗世(ろうせい)や護衛も連れて行きます。心配されるには及びませんよ」
「……そうですか」
持っていた箸を置いて、翠玉は目を伏せた。
戴剋は高齢なのもあり、邸宅からは滅多に外には出なかった。だが碩有は違い、何事も自分で確かめるのを基本としていた。腹心の部下で切れ者と名高い朗世を使って、さらに何人もの精鋭を動かして政治を行っているという。
安寧を貪っていた古参の家臣には、それを良しとしない意見もあるらしい。
「領民から不平の声が上がっているのです。私も以前あの町に滞在していたことがあるが、その時には平和そのものに見えました。何かが変わったのかもしれません」
食事が終わると、彼はいつも翠玉の房でしばし話をした。内容は政治のこと、お互いの趣味のこと、家族のこと。さまざまだった。だから今日桐の話題が続いても、翠玉は全く不思議に思わず聞いていた。
「それより、お土産何も希望はないんですか?」