六天楼(りくてんろう)の宝珠
 満たされるのと同時に苦しさを覚える、こんな強い思いを他に知らない。

──そういえば首飾りの事、結局聞けなかった。

 余りに些細な問題の様な気がして聞けなかったが、何故榮葉は知っていたのだろう。

──もう少し、さりげない機会を掴んで。きっと、その内に。

 緩やかに音を刻む鼓動は彼女を安心させる。まるでその存在に包まれているかの様に。

 耳を傾ける内にいつしか翠玉は眠りに落ちていった。
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