九十九怪怪
第1怪

夜間学校-ようかいがっこう-

この県で一番栄えている場所から、北に向かい二つの村を越え、更にその先にある山を抜ける。最後の村からも3キロ離れた場所に、私は来ていた。
そこには、かつて遠い昔に人間が住んでいたと思われる、壊れた井戸や廃材が散らばっていて、見るからにおぞましい雰囲気である。

更に、今時刻は23時。
その雰囲気はかなり助長されている。


しかし、私はそんなものは気にせず先を行く。冷たい風が私の色素の薄い長い髪を揺らした。


かつて、村落があったであろう場所を抜け、更に奥。
開けた土壌、その先には多分建物であったであろう朽ち果てた平屋。中央の壊れた時計が、そこがかつて何であったかを教えてくれる。

廃校、そこが目的地である。

あったもんじゃない、申し訳ない程度の入り口の横開きの戸を開ける。
木の下駄箱を抜け、右に曲がって直ぐの戸を開ける。



「おはよう!」


「おはよう」
「あら、今日は早めね、おはよう」「おはよ」
「………」


次々と、夜中でありながら朝の挨拶を交わしていく。
聞いた限りでは、ある学校の登校風景だろう。しかし、


「ねぇ、今日の授業ってなんだっけ?」

隣の席の片目を前髪で隠した少年に聞く。


「今日はね、人間行動学だよ」


優しく微笑みながら彼は答えた。唯一、穏便な少年である。

「あっ、そうだったんだ。じゃあ、私は寝て「あぁ…、人間を襲いたい」…ちょっと!?姑獲鳥(うぶめ)!?」


急に肩に重みを感じたと思ったら、恐ろしい言葉を聞いて驚いた私は後ろを振り返る。
そこには、げっそりした顔をした妊婦がいて、彼女は姑獲鳥という。


「姑獲鳥…。今から人間行動学だって言ってる側から…」


呆れた、の一言。

「だって…、無性に女の腑を切り裂…「ああ!!わかったから、妄想だけにしておいてよ!!」

渋々、姑獲鳥は頷こうとしたが、

「…わかるよ。人間なぶり殺したいよね、姑獲鳥」


の爆弾投下の一言でまた姑獲鳥の目が妖しく光る。
やっぱりそうよねと、言葉を発した少年に同意している。
少年は、麗しい顔立ちで彼の額には角がある。

「ちょっと、縊鬼(いつき)!?せっかく場が収まるかと言う所に、馬鹿!」
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