月と太陽の事件簿13/アルテミスの翼
言いかけて、翼さんはあわてて口をつぐんだ。

周りを見渡したが、今の言葉に気付いた人はいなかった。

やっぱ翼さんって、いい人だわー。

「ごめんごめん、気をつけるよ」

杉田さんは苦笑しながら手を合わせた。

「?どうしたの、達郎兄ちゃん」

あたしは達郎兄ちゃんが唇を尖らせているのに気付いた。

「さっきの子、動機があるんじゃないかと思ってな」

「…嫌がらせの?」

まさかCMの主役を奪われた腹いせに、脅迫状も…。

「それはどうでしょうかねー」

杉田さんは達郎兄ちゃんの考えを真に受けていないようだった。

「理子ちゃんは歌の方に力を入れてますし、出番がない日もあります」

翼さんも同調する。

「それに浜口理子は大手Hプロの超売れっ子。うちの翼なんてまだまだ目じゃありませんよ」

杉田さんの言葉に、翼さんはうなずいた。

2人とも、謙虚な人だなぁー。

あたしはつくづく感心してしまった。

< 32 / 86 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop