月と太陽の事件簿13/アルテミスの翼
「だとすると残りは【お前の翼】か…」

達郎兄ちゃんは缶コーヒーを握り締めた。

あ、スイッチが入った。

あたしはそう思った。

達郎兄ちゃんには変な癖がある。

事件を推理する時、必ず缶コーヒーを手にするのだ。

なんでもはじめて事件を解決した時、たまたま缶コーヒーを手にしていたそうで、それ以来の癖になっているらしい。

フィールドに再び審判のホイッスルが鳴り響き、それにあわせて再びブーイングが巻き起こった。

今度はゴール前で翼さんが倒されたのだ。

審判はPKを指示した。

キッカーはもちろん、翼さん。

ボールを両手に抱えた、いつもの男性スタッフが、フィールド内に走ってきた。

接触プレーの際、ボールがフィールドの外に出ていってしまったためだ。

スタッフは抱えていたボールを一個、PKのポイントへ置いた。

「まさか…!」

達郎兄ちゃんの口から、つぶやきが漏れた。

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