月と太陽の事件簿13/アルテミスの翼
「あのスタッフは毎回、左手に持っていたボールを出していたんだ。ところが、あのPKの時だけは、右手のボールを差し出した」

「え、そうだったの?」

それ以前にも、右手のボールをしきりに気にするなど、不審な行動が多かったらしい。

「あんなにたくさんの人がいる中で、なぜボールスタッフだけに目をつけたんですか?」

湯月くんの疑問はもっともだ。1人だけを監視するなら、それなりのきっかけとその根拠があったはず。

ところが達郎兄ちゃんは「1人だけじゃないさ」と事も無げに言った。

「スタジアム内だけじゃなく、スタジオやそこへ向かう道でも、不審者はすべてチェックしていた」

「不審者はすべてって…あやしいと思った人間は全員同じように監視してたってこと?」

「そういうことだ」

…。

やっぱ普通じゃないや、このヒト…。

「ところで翼さんとはあれから会ったの?」

あたしは一息おいてから話題を変えた。

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