月と太陽の事件簿13/アルテミスの翼
「気になるか?」

「当たり前でしょ」

あたしは最初の爆弾騒ぎの時に見た、翼さんの涙を思い出した。

気にならない訳がない。

「大丈夫だ。元気にやってるよ」

翼さんは現在、休養中ということになっている。

しかしそれは表向きの理由で、記者会見に備えて関係者たちと連日打ち合わせをしている、というのが真相だそうだ。

「周囲が騒がしすぎるって、愚痴を言っていた」

「へー…」

翼さんがグチるところかー…。

ちょっと見てみたかったな。

「あーそれでな、カホ」

達郎兄ちゃんは一度、咳払いをした。

「なに?どうしたの?」

達郎兄ちゃんが言葉を濁すだなんて珍しい。

首をかしげていると、店内が不意にざわつきはじめた。

見ると数人の男性に囲まれて、1人の女性があたしたちのいる席にやってきた。

その女性は…翼さん!?

「すいません月見さん。やはりあたしの口から直接言いたくて、来てしまいました」

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