苦くて甘い恋愛中毒
「で、それからその人と連絡取ってるの?」
仕方なく事の一部始終を喋らされた私に、朋佳が尋ねる。
取ってないと首を振るとそれでいいの? と聞き返される。
逆に何がいけないのか分からないんですけど。
「菜穂ちゃんさ、本当に気付いてないの?」
気付く? 何に?
「菜穂ちゃんその人のこと好きなんじゃないの?」
そう言う朋佳に、私は唖然とその顔を見つめる。
今、なんて言った?
好き? 私が?
私があの人を好き?
「いや、意味分かんない。何でそうなるのよ」
「菜穂ちゃん鈍感すぎでしょ。あたし、今まで携帯気にする菜穂ちゃんなんて、みたことないよ?」
私は普段、現代の若者とは思えないほどスマホを放置している。
たしかに、最近よく確認するし、それは確実にあの男から音沙汰があるんじゃないかと思うからにほかならない。
期待してることは認める。
でも、これが〝すき〟になる?
飛躍しすぎじゃない?
だって、一回しか会ったこともないのに。
「回数も期間も、そんなの恋に関係ないよ。理由がないとすきじゃないなんて、そんなの逆に恋じゃない」
あたり前のように、朋佳が言う。
こんな自分に内心自分が一番驚いている。
こんなこと今まで一度だってなかった。
男にいちいち左右されるような女になりたくなかったし、そういう女の子たちを内心馬鹿にしたりもしていた。
だから。
そう、だから。
私に限ってそんなこと、絶対にあってはならないのに。
そうだと認めたくなんかないのに。
それでも、朋佳が言ったことに感心している自分がいる。
目から鱗とはこのことだろうか。