私だけの王子さま



ここのホームの人たちは、本当に皆、いい人だと思う。



まだ二回しか会ったことがないのに、こうして気軽に接してくれる。



いきなりやって来て、ボランティアをさせて下さいなんて言ったのに、誰も嫌な顔一つしないんだ。



それどころか、‘来てくれてありがとう’とか、‘明日からよろしくね’とか、耳に入ってくるのは、嬉しい一言ばかりだった。




私は、もう一度、失礼しますと頭を下げた後で、事務所のドアに手をかけた。



その時。



ウィーン…



自動ドアの開く音がした。



「あれ?雪也くん…?」



花梨さんの声で、入って来たのが、委員長であることが分かった。





ドキンッ―――



その瞬間、私の心臓が、大きな音を立てる。



委員長に会うのは、3日ぶり。



夏祭りの帰りに、ぎこちない別れ方をして以来だった。



「雪也くん、今日は来られないんじゃなかったの?」



花梨さんが、窓口から顔を出して、委員長と話をしている。



私がいる位置は、ちょうど死角になっているため、委員長は、私の存在にまだ気が付いていないようだった。



< 114 / 220 >

この作品をシェア

pagetop