私だけの王子さま

そこで少し経った頃に、花梨さんに話を聞いてみることにした。


それは、夏祭りの日からちょうど半月経った頃のこと。


花梨さんは最初は難しい顔をしていたものの、あまり詳しくは言えないことと、決して外には漏らさないことを条件に、少しだけ話してくれることになった。




事務所の奥にある、職員用の休憩スペース。



花梨さんは、言葉を選びながら、ゆっくりと話し始めた。



「本多さんね、早くに旦那さんを亡くされて、
二年前までは娘さん夫婦とお孫さんと一緒に暮らしていたの」



「お孫さん…。

それってもしかして…?」



「そう。舞さんと、そのご両親」



…それを聞いただけで、胸が締め付けられる。



二年前…と言えば、ちょうど舞さんたちが亡くなった時期だった。



「その前から、骨が弱くなっていて、一度家で転倒して骨折して以来、ご家族の介護を受けていたの。

それに、当時は家族との関係も良好だった」




‘当時は’――…。

その言葉が、私の中で引っ掛かる。



それって、今は……。



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