私だけの王子さま


涙が止まらなかった。


次々と溢れる滴と一緒に、今までの私も流して欲しいと思った。


でも、現実は変わらない。


フラフラと歩きながら、私は幼い頃の自分を思い出していた。






―――――………
―――……
―…



「柚季は本当に可愛いねぇ。まるでお人形のようだよ」


まだ幼稚園に入ったばかりの私に、周りの大人たちは、声を揃えてそう言った。


でも、私の答えはいつも同じだった。


「柚季、お人形さんじゃ嫌だ。お姫さまがいいっ!!」


「……どうして?」


「だって、お人形さんは動かないから結婚もできないでしょ?
お姫さまだったら、いつか必ずカッコ良い王子さまがお迎えに来てくれるもん!!」






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