私だけの王子さま
「花梨さん、俺たちに黙ってたのは…
本多さんの意思なんですか?」
俯く私に対し、委員長は真っ直ぐに前を向いて聞いている。
その質問に、花梨さんは、言いづらそうに答えた。
「…そうよ。
あなたたちには、黙っていて欲しいって言われた。
本多さん、きっと、二人には、最後まで笑っていて欲しかったんだと思う」
天井を見上げながら言う花梨さんは、必死で涙を堪えているようだった。
本多さんは、花梨さんが初めて担当した人。
もしかしたら、この別れをいちばん悲しんでいるのは、花梨さんなのかもしれない。
「じゃあ…
どうして今日、電話を?」
委員長が、真剣な瞳で問いかける。
確かに、それは最もな疑問だった。
ギリギリまで黙っていたのに、どうして慌てて教えてくれたのだろう?
どうせ、午後になれば、分かることだったのに…。
すると、花梨さんは、机の引き出しから、一枚の写真を取り出した。
それは、何回目かのボランティアの時に、私と委員長が、本多さんと共に笑い合っている写真だった。