私だけの王子さま



それから私は、委員長に家まで送ってもらった。


もう遅いし、遠慮するって言ったのに、危ないからダメだって。

やっぱり、真面目な人なのだと思った。


そして、帰り道では、何を話していいのか分からず無言だった私に、委員長はいろいろな話をしてくれた。


あのクラスは変わり者が多くてまとめるのは大変だとか、

担任が、実は隣のクラスの先生に想いを寄せているとか……。


それは、さっきまでの涙が嘘だと思うくらい、楽しい時間だった。


委員長は優しいから、気を遣ってくれたのだと思う。

その証拠に、一度だってさっきの話を蒸し返したりしなかった。



家までの距離はあっという間だった。


別れ際、委員長は真っ直ぐな瞳で私を見つめる。


「さっきも言ったけど、俺で良かったら、いつでも話聞くから」


そう言うと、鞄からメモとペンを取り出す。
それに素早く何かを書くと、私に差し出した。


「俺の連絡先。何かあったら電話して」


委員長は、私の手にメモを握らせると、「じゃあな」と笑って帰って行った。





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