私だけの王子さま



「昨日の夜、柚季が話したいことがあるって言った時にね、なんとなくそれが何なのか分かってた」

「麻智……」



今日話したら、嫌われてしまうかもしれない。
そう思っていただけに、麻智が気付いていたという事実は意外だった。


でも、それもきっと、麻智の気持ちを見ていなかった証拠なのだと思う。



「いつから気付いてたの?」


私の問いかけに、麻智は過去を振り返るような目をして言った。



「……柚季に、初めて彼氏ができた時……かな。
その人、それまで好きって言ってた人とは、違ったタイプだったから」


中1の時、裏庭であの発言を聞いた直後だ――。

あの後すぐに、私は告白してきた顔の良い男と付き合い始めた。


要するに、始めから気付いてたということ。


「麻智には、隠し事なんてできないね……」


今日、本当にそのことがよく分かった。



「あの頃、何があったのか、話してくれる……?」


私は、麻智のその言葉に、ゆっくりと頷いてから、話し始めた。


麻智はその間、何も言わずに耳を傾けてくれた。



そして、その瞳は、私のことを、じっと、見つめていた――。





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