私だけの王子さま


―――……

「――じゃあね、今日はありがとう。お邪魔しました!」

「うん。またいつでも来てね」


結局、二人で話したところで、委員長のことが何か分かるわけでもなく、今日は帰ることにした。


靴を履いて、玄関を出ようとした時、麻智が私を呼び止める。


「柚季!」

びっくりして振り向くと、麻智は言う。


「柚季。さっきも言ったけど‘隠し事はなし’だからね!一人で抱え込んじゃダメだよ!」


「うん。分かってる。ありがとね!」


今日一日だけで、麻智との絆がとても深まったような気がする。


本当に、何度お礼を言っても足りないくらいだ。

もしかしたら、麻智と委員長は少し似ているのかもしれない。


私のことを、優しく包んでくれるような雰囲気。






――その夜、私は委員長にまだお礼をしていなかったことを思い出し、昨日渡された番号に電話をした。


でも……。
何度かけても、委員長が電話にでることは……、なかった。







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