私だけの王子さま



見覚えがあるわけだ。


なぜなら、その女性は、昨日委員長と一緒に歩いていた人だったのだから。


昨日は、横顔しか見ていないけれど、背丈や髪型などから考えて、間違いないはずだ。






―――ガラッ


その人は、窓口を開けると笑顔で言った。


「雪也くん、おはよう」


すると、委員長も優しい笑顔を返した。


「おはようございます、花梨さん」


やっぱり知り合いらしい。


二人はさらに会話を続ける。



「忙しいのに、本当にありがとね。雪也くんのおかげで、こっちは大助かりなんだから」


「それ、昨日も言ってましたよ?」


「そう?言ったっけ?」


「はい。今までに、何度も聞きました」



私は、黙ったまま、笑い合う二人の姿を見ていた。



‘雪也くん’‘花梨さん’と呼び合う二人は、とても仲が良さそうだった。


でも、委員長は敬語を使っている。


何も聞かされないままここに来たせいで、状況が全くつかめない。


すると、花梨さんと呼ばれた女の人が、私に目を向けた。



「雪也くん、その人が昨日言ってた相原さん?」




< 74 / 220 >

この作品をシェア

pagetop