私だけの王子さま
「えっ!?」
急に、自分の名前が出てきたことに驚いて、私はパッと委員長の顔を見た。
すると、委員長は、申し訳なさそうな表情で言った。
「ごめん。まだ何も説明してないんだよね?」
私は、その通りだということを強調するために、大きく頷いた。
「え、そうだったの?それなのに、ここへ?
それは驚くよね?雪也くん、ダメじゃない。ちゃんと話してあげなきゃ!」
花梨さんは、委員長の言葉を聞いて、驚いたり、怒ったり忙しそうだ。
こういう風に、思ったことを素直に顔に出せる人が羨ましい。
だって、私はこれまで、‘気持ち’を捨てて過ごして来た人間だから。
アキラとのことがあって泣いていた時に委員長に会って。
話を聞いてもらったことがきっかけで委員長を好きになって…。
まだ10日くらいしか経っていないけれど、前よりはずっと、自分の感情を表に出したり、他の人の気持ちを考えたりするようになっていた。
だけど、花梨さんは、全然違う。
すごく自然に話していて、自分を作ろうとしていない。
本来ならば、それが当たり前のことかもしれない。
でも、私にとっては、それが大きな壁に思えて仕方がなかった。
「相原、どうしたの?」
気が付くと、二人とも心配そうに私のことを見ていた。
「……ううん、何でもない」
私は、そう言って、無理矢理笑顔を作った。