私だけの王子さま


「実は今日、このホームで夏祭りがあって…。ぜひ相原にもボランティアとして参加して欲しいなって思ってさ」


「へっ!?」


確かに、ここに入る時に、夏祭りって書いてあるのを見た気がする。


だけど、ボランティアって…。


私は、戸惑っていた。


今までに、ボランティアの経験なんて、もちろんない。


それに、言いづらいけれど、ボランティアをする人は、ただのお人好しに過ぎないと思っていた。


時間は取られるのに、何ももらえないなんて、やったところで何も意味がないって。


そんな風に考えていたんだ。


でも、委員長はそれを一年も続けている。


私のこの考えは、委員長の行動を否定していることにもなるのだ。


それだけは、嫌だった。


すると、私の複雑そうな表情を読み取ったように、花梨さんが言った。



「ボランティアってね、最初は少し抵抗があるかもしれないけど、きっと、すごく良い経験になると思うよ?

今回は急だったし、無理にとは言わないけど、もし良かったら、手伝ってもらえないかな?」





―――良い経験。


その言葉が、すごく耳に残った。


今の私にとって、何が必要なのか。


それは、たぶん広い視野を持つことなんだと思う。


今までの狭く、窮屈な世界から抜け出すために…。


委員長が今日誘ってくれた理由も、そこにあるような気がした。


私は、委員長をチラッと見た。


その瞳は、ただ真っ直ぐに、私を見つめている。




「……やって…みます」


私がそう言った時。


委員長が、優しく微笑むのが見えた。






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