私だけの王子さま
振り向いた委員長の元へ、急いで駆け寄った私。
委員長は、私の焦ったような表情に?マークを浮かべている。
「相原、どうしたの?」
委員長の問いかけに、私は少し乱れた呼吸を整えながら言った。
「あの…委員長って…
家、あっちじゃないの?」
私の指の先は、駅の方向を差していた。
「………相原、俺んち知ってたっけ?」
少し間を空けてから、委員長のいつもより低い声が聞こえて来た。
それが…暗い道に響いて、少しだけ、恐怖に似た感情を作り出す。
委員長の表情が険しい。
ついさっきまで、近くに感じていたはずなのに、今は遠くにいるような気がした。
「…委員長?」
私は、様子をうかがうように、委員長の顔を覗き込む。
「…でも……から…」
「え?」
何か言ったようだったけれど、イマイチよく聞き取れない。
すると委員長は、数秒前の険しい顔から一転し、多少穏やかな表情に戻って、もう一度言い直した。
だけど、その笑顔はいつもとは違い、ひきつっている。
「何でもないから!ただちょっと、散歩でもしながら、回り道していこうと思ってさ!
じゃあ、今度こそ、俺行くから!」
「ちょ…委員長!?」
委員長は、そのまま走って行った。
残された私の呼び声に、一切振り向くこともなく―――。