私だけの王子さま


―――パチッ



夢の中…

あと少しで委員長に手が届きそう…というところで目が覚めた。



今日は土曜日。


夏休みに入り、曜日の感覚がなくなっていたが、
リビングから朝の慌ただしい音が聞こえなかったためすぐに分かった。



まだ、誰も起きていない。

朝の静かな空気が、私を身体を包む。



寝不足のせいで、頭がボーッとしているけれど、もう一度寝ようという気にもなれかった。




…昨日私に家を聞かれた時の、委員長の表情。


明らかに動揺していた。



あんな委員長を見るのは、初めてで。


必死に冷静さを取り戻そうと、無理矢理の笑顔を作っていて…。



‘何でもない’と誤魔化した委員長の姿を思い出すたびに、
悲しい気持ちが押し寄せてくる。



‘これ以上、俺の中に入って来るな’



そう、言われた気がしたから…。



ボランティアに誘ってくれたり、帰りに自分の夢を話してくれたりしたこと。


委員長との距離が、少しずつ縮まっていくようで嬉しかった。


それなのに、今日の心の中は空っぽだ。


まるで今まで委員長がいた場所に、ポッカリと穴が開いたみたい。



そう思ったら、何だか急に寂しくなった。





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