緑の風がそよぐとき

この間のことも少し気になったし、倫太郎に付いて外へ出る。

「気をつけてな」

いつの間にか彬兄が玄関まで出てきていた。

「おう!」

倫太郎はニカッと笑い返事をする。

「真琴を乗せるんだから転けるんじゃないぞ」

彬兄の心配性が倫太郎に念を押す。

「転けるかよ!」

倫太郎は半ば呆れ顔で返す。

そんな二人のやり取りに思わず笑ってしまう。

玄関を出ると、倫太郎は「はい」ってヘルメットを渡してくれた。

「でも、後ろに乗せる人決めてるんでしょ?」

「あ……、えーっと、真琴は幼なじみだから特別だよ」

倫太郎は後ろを向いたままそう答える。

「あんたがそう言うなら」

「いいから早く乗れよ」

倫太郎はもう自分のヘルメットを被っている。

そんなことを言われても初めてのことで、ヘルメットもうまく被れない。

もたもたしてるわたしのところに倫太郎が来て、
「真琴ってとろいよなぁ」
と言いつつ、ヘルメットの紐を締めてくれた。

< 21 / 27 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop