Monsoon Town
「周陽平」

その名前に、陣内は目を大きく見開いた。

「――周…?」

男――陽平は口角をあげると、
「陣内さんのお見合い相手、周綾香の兄です」
と、言った。

確かに、よく似ていると思った。

赤茶色の髪も、端正なまでに整った美しい顔立ち、全身からあふれる強気な雰囲気も、何もかもがよく似ていると思った。

「何故お前が、俺の後をつけていたんだ?」

陣内は聞いた。

「妹――綾香に頼まれたんですよ」

そこまで言って、陽平は少し黙る。

黙った後で唇を開くと、
「陣内さんの周りを調べて欲しいって」
と、言った。
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