Monsoon Town
同じ頃、ロビーは先ほどの騒々しさとは打って変わって静かだった。

「聞きたくないなら、今のうちだぞ」

ソファーに座ってる那智、綾香、ひまわりの顔を見ながら、藤堂が言った。

「覚悟はできています」

那智が首を縦に振ってうなずいた。

「藤堂さん、早く話してくれませんか?」

急かすように綾香が言った。

「大丈夫です」

真剣な顔で、ひまわりが首を縦に振ってうなずいた。

藤堂は気を落ち着かせるように、深呼吸した。

これから話すことは、今まで誰にも話すことがなかった陣内の過去である。

ずっと、ずっと、封印してきた。

「――じゃあ、話すよ。

昔、あいつは母親に捨てられたんだ」
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