Monsoon Town
でも、どこを探しても彼女は見つからなかった。

彼女が見つからなかったから、あきらめた。

自分のせいで、彼女を失った。

笑顔を失くしただけでなく、彼女までも失った。

そのうえ、彼女は自分のことを忘れていた。

――こないで!

ショッピングモールで彼女を見つけたのに、泣きそうな顔で激しく拒まれた。

「――うっ…」

うめくような声と共に、頬に冷たいものが流れた。

笑って欲しかっただけだった。

見て欲しかっただけだった。

ただ、それだけのことだった。
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