恋して、チェリー


“返してもらうね”

おバカな頭をフル回転させなくとも、これくらい分かる。



これは以前、王子は彼女のモノだったってこと。



彼女の言う通り、あたしは勘だけはいい方だ。



王子の“初カノ”も
王子を傷付けたのも。




「簡単にはあげないよ?」

完全、本気モードに移ったあたしはもう後に引けない言葉を投げかけた。


ってか、引けない以前に引かないけど。





今の状況を、ひとまず冷静に判断してみる。


バラの挑戦状を送ってきたのは、彼女。

わざわざあのチャラ男子にまで頼んで、あたしの顔を確認して。

その時に、名前も聞いたんでしょう。



「ふふ……っ、これ」

ポケットから出したのは、1枚の写真。


案の定それは、あたしと恭一くんが写っていた。

公園を歩いているふたり。


……いつの間に、隠し撮りされてたんだ。


これを使ってあたしを呼び出させて。

クラスの確認までさせて。


学校を転校する程――本気、なんだ、この子。


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