恋して、チェリー
あたしだって、負けていられないもん。
校長室から少し歩くと、教室が並ぶ廊下に続く。
「あ! あの子が?」
教室の窓から、まるで見せ物みたいにあたし達を見る生徒たち。
「……え、なんか」
「似てない? あのふたり」
予想していた噂が、コソコソとあちらこちらで聞こえてくる。
“似ている”
なんて、自分で思ってどうかしてるって思ったけど。
この様子を見ると、それも否定できないモノになってきた。
「双子っていっちゃおうか?」
隣から聞こえる、まるで楽しんでいるような声。
こんなノリも、おちゃらけた言葉も、やっぱりあたしに似てる。
あたしはいつも、ポニーテールに結んでるけど、それをほどけば髪の長さまで同じくらいだ。
小さい頃から、嫌だった。
服も髪型も、全部、そう。
誰かと“かぶる”のが。
自分がブレるのが幼いなりに、分かっていたから。
今思えば、自分に自信が持てなかったのかもしれない。
誰かと同じって、こんなにも嫌なんだって初めて知ったかも。
髪は絶対、下ろさないようにしよう。
おだんごに、編み込み、サイドにみつあみ……。
変なプライドが、ふつふつと湧き上がってくるのが分かった。