魔法の切符
魔法
春です。

春は苦手です。

眠くなるし…



『駆け込み乗車はおやめ下さい』

(電車!!)

目を開くといつもの駅。
いつもの電車。

肩には寝ている見知らぬ人。

『一番線 ドアが閉まります』

(え?あっ!!)

ゴーーー

「…」

(どちらさま?)

「あのー、朝です。そして、駅です。」


ガバッ

「!?」

「メロンパン…」

(い、いや。そんなに顔の近くで言われても…)

「…の夢見た。」

(?…)

「……ア゛!!」

彼はようやく目が覚めたらしく、私を見て真っ青な顔をしていた。
「ごめん!!ほんっとにごめんね!?」

彼は急に私に向かって手を合わせてきた。

「叩き起こしてもよかったのに…ごめんね!?」

「い、いえ!私も寝てたし」

「次の電車…時間あるね。遅刻とか…大丈夫?」

「あ えっと へーきです。たぶん。」

「1年?」

「はいっ」

「だよね。制服キレイだもん。オレも、オレもー
ってか、ほんとごめん。入学早々…」

「ううん、気にしないで。 本当はあんまり 乗りたくなかったから…」


春は苦手。
眠くなるし。
新学期だし。


『1番線 電車がまいります』


「行こ?」

「うん。」

私達は電車に乗り込んだ。

「あっ。名前聞いてもいい? オレ 村上 雅樹。」

「彩原 日菜子です」
「オッケー。じゃあ日菜子ちゃんに…
“素敵な出会いがありますように”」

雅樹くんは手を合わせて言った。
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