クリヴァル
「ストークさん…情報を仕入れるには最高の、この国一番の、適材…逸材だとは思いますが…………ビックリさせないでください」


カロンにとってミアは畏敬の対象であるようだ。

知識人に興味なしのカノーが口をはさむ。


「…ん~?錬金術師が皇太子妃に?」


「この国の皇太子は…ちょっとだけ有名なんですよ」


「ふぅん…変わってるのねぇ」


美しいのは美しいが、恋愛対象になる女ではない。

それもそのはず、ミアは瞬き以外に表情を動かすことが無かった。


「皆さまにお願いしたいのは、この事件の殺戮無き解決……微力ながらお手伝いさせて下さい」


またペコリとミアが頭を下げた。

頭を上げる瞬間、向かい合う死神たちに冷えた視線を向けたのは気のせいであろうか。


(私たちに釘をさした?)


カノーはフードの下で眉根をつり上げた。


「私、この国で黒鉄を保有している民間の者たちを把握しております。まして黒鉄の鎧ともなれば、思い当たるのは1人だけ」


「それは?」


ボルグが低く尋ねる。


「翡翠(ひすい)兄弟。兄はこの国唯一の死神。ここに資料をまとめました、後はよろしくお願いします」


資料を木のテーブルに置く際に、女同士目が合った。


「……他力本願とお思いですか?」


カノーはあくまで無表情の女が気に入らない。無視をしてツンと顔を横に向ける。


「私には知識も才能も、たゆまぬ努力を惜しまぬ精神力もありますが、武力だけは持っていない……時は一刻を争う、よろしくお願いします」


ミアはカノーに深々と頭を下げた。………そのまま頭を上げない。

ミアなりの『一生懸命』の感情表現なのだろうか、…かなり不器用ではあるが。
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