【完】甘いカラダ苦いココロ

 私が知ってる翔梧の情報は会う頻度にしてはあまり多くはない。大学生で実家暮らし。お祖母さんがスペインの人だということ。実家はこのマンションからそれほど遠くないらしい。車は無く、自転車で来ることも何度かあった。
 
 土日は私が必ず仕事だから会うのはほとんど平日。会わない日はたわいのないメールをくれる。週に二日以上のペースで会っていたけど翔梧も、余り私に踏み込んだことは聞いて来なかった。妹の事や職場の事を少し話したぐらいで、私もまだ本当の年齢のことだけは言っていなかった。なんとなく、話す機会がなかっただけで、別に隠してるつもりもなかったんだけど……。

 五月半ばの月曜。
 朝起きてカーテンを開けると五階の東向きの窓から真っ青な空が見えた。暖かな明るすぎる太陽が全身を包みこむ。晴天、お掃除日和。今日は一日掃除する事に決めた。二人分の飲みかけのコーヒーカップと読みかけで開いたままの男性向けのファッション情報誌。数時間前まで翔梧がいた形跡を一つ一つ片付けていく。昨日は遅番だったけど、仕事の後に合流したのだ。

< 33 / 231 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop